走る!税金トピックス

「耕作放棄地は課税強化」という現場を知らない政府の暴走

自分の実家は農家をしています。
農家と言っても兼業農家ですが、小田原特産の梅やミカン、お米などを作っています。2005.5.29 004

今の時期は青梅の収穫の時期。梅干にしたり梅酒や梅ジュース、梅ジャムなど自家製のものは美味しいですよ♪

自分も朝メシ前に畑の手伝いをしていますが、農作業は結構重労働です。
(いいトレーニングにはなっていますけどね・・・(-_-;))

ただ、今までミカン畑や梅林があったところも耕作放棄をして荒れ放題になっているところも目立ってきました。

その畑を所有しているお家も知っていますが、農業をやられていたおじいさんが他界した後は農家をやめてしまっています。
そんなお家はどんどん増えています…。

 

現場を知らないの規制改革会議

先日の日経新聞に下記のような記事がありました。

「ニセ農地」をあぶり出せ 耕作放棄地を課税強化

農業をまじめにやる気のない「農家」が、最も指摘されたくない弱みを突いたといえるだろう。
耕作放棄地への課税を強化する――。
政府の規制改革会議(議長・岡素之住友商事相談役)が16日に出した答申だ。
農業の衰退を防ぐには、たんに規制を緩めるだけではなく、むしろルールを厳しくすることが必要なときもある。

政府の規制改革会議は耕作放棄地の課税強化を答申に明記した。
答申は、農地にひそむ問題をじつに明快にあぶり出した。
「農業をやる気がないのに、農地を持ち続ける人がいる」
「農地の課税負担が軽いことが、それを可能にしている」
「農地を持ち続ける狙いは、いつか転用することにある」
「それが、やる気のある農家への農地の集約を邪魔している」
意訳すると、ざっとこんな内容になる。
(日本経済新聞 編集委員 吉田忠則 6/22)

この記事によれば、農地について固定資産税が優遇されているため、零細農家が農地を手放さないということが問題であるということが書かれています。
固定資産税を課税強化すれば、農地を売却したり耕作を促したりすることにつながるということが言いたいのでしょう。

この記事について違和感を感じているのは自分だけではないと思います。

現状の農家の置かれている状況について、全く知らない人が書いたんでしょう。

耕作放棄地が増えているのは、固定資産税が安いからではなく「耕作できる人が減っている」からなのです。

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処分したくても処分できないのが「農地」

「使っていない土地があるなら処分すればいいじゃないか」

そう思う方もいるかもしれません。
実は今の日本の法律だと農地というものは、簡単に売却などの処分をすることができないのです。

農地を売却するためには、とても大変な手続きが必要になります。

市街化区域内(都市計画区域内)の農地であるならば、転用などの一定の手続をとることによって宅地として売却することが可能です。
ただ、農地のほとんどは市街化調整区域(以下、「調整区域」)という場所に存在しています。

調整区域内の農地の場合、売却のために宅地に転用することはほぼ不可能です。
また、農地のまま売却するとしても、買い手側が農業を営んでいるなどの一定の条件が必要となるため、なかなか売却することができません。

一般の不動産業者などに農地の売却の話を相談しても、業者も売れない土地のために骨を折ることはしたくないのでなかなか積極的に協力してはくれません。
例え売却の話がまとまったとしても、農地自体が安い価額でしか取引できないので、不動産業者の仲介料も大した金額にならないという理由もあります。

自分も相続手続をお手伝いした依頼人の方から
「相続した農地を処分できないか?」
という相談を多く受けますが、処分をするまでには相当な時間もかかりますし手間もかかります。

市役所や農業委員会などに相談に行っても「農地の処分は・・・難しいですね・・・」という回答ばかりです。

 

農協主導が変わらないとムリ

政府の「大規模農家を育成して効率化した農業を行っていきたい」という趣旨には賛成します。

ただ、そのためには目の上に大きなタンコブがあります。それが「農協」という存在です。

地域の農協は小規模な農家を対象とした事業を中心に行っています。
それらの小規模な農家が大規模な農業企業に集約されてしまうと、小規模な農家を相手にしていた農協の存在意義は小さくなってしまいます。

本来は農業の指導的立場である農協が、耕作放棄地対策を含めた農家への大規模集約を促していかなければならないはず。
ただ、そんなことをしてしまえば自分たちの首を自分たちで絞めてしまうことになるわけです。

農協以外からは農業の情報を知りえることができない農家のおじいちゃん・おばあちゃんたちにとって、政府の思惑など届くはずがあるわけないのです。

また、これらの農協を中心として支援を受けていた議員の方たちも、大きな票田を失ってしまうことになるので積極的には動けないでしょう。

さらに大規模な農業企業が欲しいのは「効率化しやすい規模のある農地」です。
山間部や車両が入りにくい無道路地の農地などは機械化しにくいので、野放しになってしまうことでしょう。
これらの農地についてはどのように対応していくのでしょうか?

 

農業従事者の平均年齢は70歳を超えています。
あと数年もすれば農業に携わる人たちは半分くらいになってしまうのではないでしょうか?

今後、放棄したくなくても放棄せざるを得ない農地は増えていきます。
形骸化した「農地バンク」などの手法ではなく、もっと抜本的な日本の農業政策を考えて欲しいものです。

 

 

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