
マイナンバー制度は悪者なのか?~小国・エストニアに学ぶコト~
マイナンバーの通知書はもうお手元に届いたでしょうか?
今朝のニュースでは11月11日の段階で発送の手続きが完了したのは全体の1割程度ということ。
当初の予定では11月中に全世帯に通知予定ということでしたが、どうやら予定通りにはいかないようです。
当初から反対意見も多く出ているマイナンバー制度。
最初から雲行きが怪しくなってきました。
Contents
マイナンバー制度は悪者なのか?
「何だか良く分からない内容だし、どうしたらいいの?」
「情報が漏えいしてしまったら大変じゃないの?」
マイナンバー制度にはまだ未確定な要素も多く、不安に思う方も少なくありません。
ただ、マイナンバー制度というシステム自体が悪者なのかといえば、そういうわけでは無いと思います。
マイナンバー制度が既に浸透していて、うまく機能している国もあるからです。
エストニアという国を知っていますか?
みなさんは「エストニア」という国をご存知でしょうか。
エストニアとは、バルト海に面する小さな国です。
ラトビア、リトアニアと一括りにされて「バルト三国」と呼ばれていたりします。
旧ソヴィエト連邦を構成していた国の一つですが、今ではこの国が「マイナンバー制度の先進国」として世界中から注目を集めています。
エストニアの面積はだいたい九州と同じくらい。
人口は130万人ほどなので大分県と同じくらいの規模です。
国としてはそれほど大きい国ではありません。
エストニアは超IT国家
国の規模としては大きくありませんが、この国には大きな特徴があります。
それは、国家全体が「超IT国家」なのです。
「スカイプ」という通話アプリケーションがありますが、このアプリを開発したのもエストニアの企業です。
ただ、もともとITが強かったわけではありません。
ソヴィエトから分離した際、小国家であるエストニアは、国として生き残るために新たな産業を作りださなければなりませんでした。
そこで目を付けたのがコンピュータテクノロジーやネットテクノロジーといったIT分野です。
国家的産業としてIT分野産業の育成に力を注ぎ、「eストニア」とまで言われるようなIT国家に成長しました。
国民ID制度の導入
そんなIT国家のエストニアで2000年に導入されたのが、国民ID制度というIDカードを国民一人一人に持たせる制度です。
いま日本で導入しようとしているマイナンバー制度のようなものと思ってもらえれば分かりやすいかと思います。
エストニアでは15歳以上になると、このIDカードを持つことが義務づけられます。
IDカードには、顔写真や氏名、生年月日、住所などが記載されています。
このカードの内部にはICチップが内蔵されており、このICチップに記録された情報により様々なサービスを受けることができるようになっています。
例えば、病院で診察を受けて薬を処方してもらう時には、このIDカードに処方情報を記録させます。
そして薬局ではIDカードの情報に基づき、薬を処方することになります。
過去の処方状況や既往症、アレルギー情報なども全てIDカードに記録されていますので、誤った処方をすることが無くなります。
またお店ではポイントカードのような機能も果たします。
どのお店でどのようなモノを購入したかも記録されるようになります。
ですので、万が一販売している商品に危険な混合物が混じっていたり、家事などのトラブルになる電化製品などを販売しても、どの人が購入したかが分かるようになっています。
もちろん、こういった情報にアクセスできる権限を持つ人は限らています。
また、個人の収入情報も全て国が把握できるようになっていますので、税金の課税漏れも少ないです。
所得税や法人税、消費税などの税金も簡素化されています。
日本のように複雑ではないので、税務申告なども簡単に済んでしまいます。
情報漏えいが心配ではないのか?
これだけ様々な情報がIDカードで統合されてしまうと「情報が漏れてしまったら大変ではないか?」と思う人もいるかもしれません。
エストニアにおいても、セキュリティ対策には十分な注意が払われています。
エストニアでは「X-ROAD」というインターネットセキュリティシステムを国が運営しており、そのシステムにすべてのサービスが繋がっています。
国家事業として根幹システムの情報セキュリティが稼働しているので、国民は安心してサービスを利用できるようになっています。
この「X-ROAD」というシステムはフィンランドなどにも輸出されています。
日本が新幹線の技術を東南アジアに売り込んでいるのと同じように、エストニアではIT技術を外国に輸出しているのです。
ですので、システムに欠陥が出てしまえば国家的損失になってしまいます。
エストニアでは、国民の共通意識として国家全体でIT技術の向上に努めているのです。
犯罪率は減少
エストニアでは「情報が漏れても別に構わない」という意識が国民にあるようです。
個人の名前や住所が知られても別に困ることは無いし、財産状況が分かっても別に構わないといいます。
「なりすましや詐欺、盗難が発生してしまうのでは?」と思われるかもしれませんが、逆に多くの情報が公開されているために透明性が高く、誰が何をしたかがすぐに分かってしまいます。
例えば、誰がどの情報にアクセスしたかの履歴も分かります。
本人や関係者以外の人が個人情報にアクセスすれば、外部アクセスの履歴が残ります。
そのため、エストニアではID制度を導入してからの方が、こういった犯罪は減少したそうです。
まとめ
エストニアは小さな国です。
小国が生き残っていくためには国民が一丸となってアイデアを出していかなければなりません。
国民一人一人がIT化に協力することによって「マイナンバー制度」を機能させているのです。
それでは日本ではどうでしょうか。
日本はエストニアに比べれば大国です。
人口も100倍近くいますし、経済的な環境もだいぶ違います。
エストニアのように国民一人一人が同じベクトルで動ければよいのでしょうが、現状では足並みがそろっているとは言い難いでしょう。
マイナンバー制度には、メリットもあればデメリットもあります。
ただやると決まった以上は、メリットの部分を生かすことが大事なのではないでしょうか。
マスコミもメリットの部分をもうちょっと報道した方が良い気がしますけどね。
お知らせがあります!
11月18日(水)に小田原倫理法人会さんが主宰するモーニングセミナーで講師を務めさせていただきます。
テーマは「マイナンバー制度で変わるビジネス未来予想図」。
今回のブログで書いたエストニアなどの例を取り上げつつ、マイナンバー制度が今後のビジネスに与える影響についてお話させて頂きます。
日時:2015年11月18日(水)午前6時30分より
場所:小田原お堀端コンベンションホール
時間は早いですが、どなたでもご参加いただけるようですので興味がある方は来てくださいね~♪
自分は朝早いのは得意なので無問題なのですが・・・(´-ω-`)ニヤ