
ケーキやコーラに税金をかける「砂糖税」
税金にはいろいろな役割があると言われています。
子供たちに税金のことを教えるため、われわれ税理士は「租税教室」というものを行っているのですが、その際に
「税金は社会で生活をしていくための会費のようなものですよ~」
というお話をさせて頂いています。
道路や学校、病院や警察、ごみの処理や公園の維持などにお金がかかるので、それらをみんなで負担していくために税金が必要なんだというコト。
税金にはこういった「社会の会費」という役割以外にも「富の再分配」や「景気調整」という役割があります。
そしてもう一つ、重要な役割があります。
それは「政策実行のコントロール」という役割です。
税金で消費者の行動をコントロール
「政策実行のコントロール」とは、税金のかけ方によって国民の行動をコントロールしようというものです。
例えば、「たばこの喫煙率を下げたい!」という政策目標があったとします。
このような場合に、政府として「たばこは体に害を与えるので喫煙を控えましょう」というPR広告をするとか様々な施策を考えます。
ただ、最もカンタンで手っ取り早い方法はたばこ税を引き上げてたばこの小売価格を引き上げるというコトです。
そうすれば、禁煙を始める人が増えるでしょうし、経済的に量を減らす人も増えていくでしょう。
このように政策を目標に向かって実行するために税金が用いられることが良くあります。
たばこ税と似たような性格を持つものとしては以下のようなものもあります。
▼ 酒税・・・お酒の飲みすぎを防ぐ
▼ 揮発油税(ガソリン税)・・・自動車の利用を抑制してCO₂の排出を抑制する
▼ 固定資産税・・・多くの不動産を持ちすぎていることへの抑制
もちろん、これらの税金がそのためだけに設けられているワケではありませんが、政策をコントロールするうえで利用されている面もあるのです。
メタボ対策のために砂糖に税をかけるべき?
このような目的で、最近あるものに対して税がかけられようとしています。
そのあるものとは「砂糖」です。
昨日のニュースで以下のようなことが取り上げられました。
国民の健康対策として、たばこ、アルコール、砂糖などへの課税強化を求めることなどを盛り込んだ提言書を、厚生労働省の有識者会議がまとめた。
いわゆる「団塊ジュニア」の世代が65歳を迎える、2035年までに実現すべき保険医療システムを示した提言書には、国民の健康対策として、たばこ、アルコール、砂糖などへの課税を強化することを求めている。
また、医療費抑制策として、風邪などの軽い病気の患者の自己負担は高くして、自分で治療することを促すなど、病気に応じて、負担割合を変えることなどが盛り込まれた。
また、たばこについては、2020年の東京オリンピックまでに、受動喫煙のない「たばこフリー」社会を実現し、2035年までには、喫煙者自体をゼロに近づけるためのあらゆる手段を講じるという。
また、厚労省内に推進本部を設置し、実行可能な施策から実施すべきだとしている。
(中略)
嗜好品のお酒や、たばこに加えて、普段よく使う調味料の砂糖などにも課税を検討していくべきと書かれている。
こうした必需品が課税されるかもしれない事態に、疑問の声が上がっている。
「生活必需品だから、(課税は)やめてほしいですね」
「(生活に)必要なものに税金かければ、みんな買うんだろうと思うけれど。そこから糖尿病などのリスクがっていうつながりは、難しいなと」
「食べ物は、絶対生きていくうえでいると思うので、違う税つけられても」などと町の人は話している。
たばこやアルコールに対しては現在でも課税されていますが、同じように砂糖についても課税していこうという発想です。
お菓子やケーキなどのスイーツや糖分が多いジュースやコーラなどにも課税をして「消費を抑制」するということなんでしょうね。
突拍子もない発想かと思われるかもしれませんが、実は他の国には似たような税金があるのです。
ポテトチップス税にゲップ税?
ヨーロッパのハンガリーには「ポテトチップス税」というモノがあります。
2011年9月に施行された税金ですが、ポテトチップスのようなスナック菓子や砂糖が多い炭酸飲料などのジャンク食品について税金が課税されるようになりました。
ちなみに、ポテトチップス1キロあたり約80円が課税されているようです。
だいたい市販のポテトチップス一袋が150グラムぐらいですから約10円ぐらい負担するような感じですかね。
同じヨーロッパのデンマークにも、脂肪を多く含む食品に対して「脂肪税」という税金があったことがあります。
対国民の健康増進のために導入されたのですが、国民が海外に買出しに行ってしまうなど消費に逆効果になってしまったため、現在では廃止されています。
また、中国では春節に配る月餅に対して課税する「月餅税」、ニュージーランドではメタンガスの増加につながるとして「家畜ゲップ税」なるものも検討されたことがあります。
ですので、砂糖に対して「メタボ税」なるものが創設されたとしてもおかしくはありません。
実際のところ、どのような顛末になるかは分かりませんが、甘いもの好きの人にとっては甘くない世の中になってしまうかもしれませんね。