
税法は国税4法を選択すべき~税理士試験合格に向けて~
税理士試験の短期合格を目指すには「会計2科目に同時チャレンジした方が良い」ということを前回の記事にアップしました。
[blogcard url=”https://suzuki-kaikei.net/wp-ver3/2015/08/31/zeirishi-kaikei/”]まず会計2科目をクリアすることが出来れば、次はいよいよ税法科目です。
この税法科目をどのようにクリアするかということが、税理士試験の醍醐味といっても過言ではないかと思います。
試験科目である税法は全部で9つあります。
その中から3つの税法に合格すれば、会計に科目と併せて5科目合格となり、晴れて税理士になる資格が与えられるわけです。
※税法の組み合わせ方によっては選択に制限があるものもありますのでご注意を…。
それでは9科目の税法のうち、どの科目を選んだ方が良いのでしょうか?
実際に試験勉強と実務の両方を経験している立場としてお話させて頂きます。
結論は「受かればどの科目でも構わない」のだが・・・
税理士試験の税法科目は、大きく分けると2種類に分けられます。
法人税法、所得税法、相続税法、消費税法の4科目は「国税四法」と呼ばれ、国の税収の大きな部分を占める主要な税法です。
それに対し、酒税、事業税、住民税、固定資産税、国税徴収法の5科目は「ミニ税法」や「サブ税法」と呼ばれ、比較的ボリュームが少ない科目となっています。
税法の試験科目は3つ選べるといいましたが、多少の制約があります。
9科目の税法のうち、法人税法と所得税法は選択必須科目と言われ、どちらかには最低1科目合格する必要があります。
また、消費税と酒税、住民税と事業税はどちらかしか選べません。
さて、この中からどの科目を選んでいくかということがポイントとなります。
結論を言ってしまえば「試験に合格できるのであればどの科目を選んでも構わない」ということ。
しょせん、試験は試験です。
何はともあれ合格しなければ意味がありません。
すべて国税4法のどれかを選択して合格しようが、ミニ税法で合格しようが、税理士試験に合格さえできれば結果は同じです。
合格証書に合格科目が書かれているわけではありませんし、税理士が自分の合格した科目を証明する書類なんて無いです。
合格の難易度は変わらない
法人税法や所得税法などの主要税法は、ミニ税法と比べて勉強しなければならないボリュームも多いですし、問題自体も難しいものが多いです。
専門学校などで合格までに必要な学習時間の目安を公表していますが、法人税法や所得税法が600時間と言われているのに対して酒税法や国税徴収法は150時間ほどと言われています。
その差はおよそ4倍。
ただ、だからといって法人税法よりも酒税法の方が合格しやすいかと言えばそんなことはありません。
合格率は全ての科目で10~13%前後。ほぼ同じような合格率です。
全体を勉強するための時間には差があるかもしれませんが、少ない時間の科目であればそれだけ勉強の質が要求されるわけです。
つまり全体のボリュームが少ない科目は完成度が必要になるので、1か所の間違いが致命的となるのです。
私の知り合いでも固定資産税を10年近く勉強している先輩がいます。
専門学校の模擬試験ではいつも上位レベルにいるのに、本試験でミスしてしまったために何年も合格できていません。
それに対して、初めての試験で法人税法に合格できる人もいます。
専門学校の模擬試験ではそこまで上位にいるわけでもなかった人が、本番の試験では点数のとれる基礎を確実に拾うことが出来たので合格できたのです。
短期的に見たら、勉強する時間が少なくて全体像が把握できるミニ税法の方が取り組みやすいです。
ただ長期的に見れば、ボリュームが多い科目の方が1点に左右されることが無くなるので実力を発揮しやすいと言えるでしょう。
国税4法が絶対にオススメ
9科目の税法のうち、どの科目をオススメするかと言われれば、間違いなく「国税4法」をオススメします。
将来、税理士の実務をこなしたいのであれば、必ず法人税法、所得税法、消費税法、相続税法の知識は必須だからです。
具体的な理由をあげるとすれば以下のようなものです。
申告納税が必要だから
国税4法は「申告納税方式」という税金を扱う法律です。
申告納税とは、簡単に言えば自分で税金を計算して納付を行うというもの。
(それに対して国や地方公共団体が税額を計算して納付をさせるものを賦課課税方式と言います。)
法人税や所得税などの申告納税代理という業務は、税理士にとって最大の独占業務ですし、逆に言えばこれが出来なければ税理士の仕事はできません。
ミニ税法にも申告納税方式の税金はありますが、あまりメインで使う税ではありませんし、税理士の業務として関わることも少ないです。
実務や就職に有利になる
申告納税代理は税理士事務所のメインの仕事です。
働きながら勉強をしている人にとっては、試験勉強の知識がすぐに実務に生かせますし、逆に実務の内容とリンクさせることで勉強の効果も上がります。
また、これから就職したいと思っている人は、法人税法や消費税法に科目合格しているというだけで有利になります。
採用する側にとっても、一から税法のことを教えるよりも合格レベルにある人間を採用した方が効率がいいからです。
勉強したことがあるというだけでもプラス材料になります。
特に最近では税理士試験の受験者も年々減少しています。
国税4法を勉強しているというだけで、大きなアピールとなるのです。
税理士試験だからこそ選びたい
なかには「ミニ税法で試験合格して、主要な税法は税理士になってから勉強する」と考えている方もいるかもしれません。
そういう方に一言申したい。
「税理士試験に合格しなければならないというプレッシャーの中での勉強にこそ価値がある。」
というのが私の持論です。
資格を取得してから税法を勉強しようと思ってもなかなか身に着くものではありません。
試験免除を受けた税理士と試験合格した税理士との一番の違いは「合格科目に対する知識と理解と勉強方法」だと思っています。
税法は毎年ころころ変わるので、税理士になってからも税法の勉強は続けていく必要があります。
やはり税理士試験で体系的に基礎を勉強した税法科目については理解も早いです。
研修に出席したり本を読んだりすれば税法知識は後からでも身に付けられます。
ただ、税理士試験ほど「絶対に覚えなければ!」というプレッシャーもないですし時間的な制約も少ない。
何より試験で点を取る必要が無いので、切迫感がない。
どちらの方が身につきやすいかは明白でしょう。
また、試験で合格した税法というものは、実務をしていく上でも自信をもって処理することが出来ます。
例えば相続税法などは、税理士でも扱いたくないという人が多いです。
それだけ奥が深く、また実務リスクも大きい税法です。
私は相続税法を勉強したおかげで、自信をもって実務経験を積んでくることが出来ました。
将来どういう税理士になりたいかで考えよう
どの科目を選ぶかということは税理士試験合格のためには非常に重要です。
ただ試験合格のためだけではなく、将来自分がどういう税理士になりたいかということを考えて税法科目を選んでもらえればなぁと思います。